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NVDAワークショップ概要

9月15日(土曜)から17日(月曜・祝日)にかけて行われた Python 開発者のイベント PyCon JP 2012 の併催イベントとして、NVDA 日本語チーム はNVDAワークショップを開催しました。

English: NVDA Workshop in Japan

録音と録画

YouTube Live でのライブ配信の録画は、講演および意見交換会のページをご参照ください。

録音の公開は10月31日で終了しました。

資料

 

記事

 

会場

会場は産業技術大学院大学(東京都品川区東大井一丁目10番40号)です。

 

最寄り駅はりんかい線 「品川シーサイド駅」B出口(徒歩3分)です。

  • 16日(NVDA関連講演の開始前 14時30分集合)および17日(意見交換会の開始前 13時30分集合)に品川シーサイド駅からの誘導を行ないました。

 

招待講演

NVDA 日本語チームは以下の皆様をこのワークショップにお招きしました。

  • Michael Curran 氏:オーストラリア NV Access Limited 代表、NVDA の主要な開発者のおひとりで、ご自身がスクリーンリーダーのユーザーでもあります。
  • Jerry Wang (王建立) 博士・Aaron Wu 博士:王建立 博士とAaron Wu 博士は台湾 Taiwan Digital Talking Books Association にて NVDA の普及活動や、中国語など東アジア言語対応の開発を指導・担当しておられます。
  • 河村 宏 氏: DAISY コンソーシアム 前代表で、現在も支援技術開発機構(ATDO)の副理事長として「読書が困難な人々を支援する技術」の開発に取り組んでおられます。

 

内容

9月16日(日曜)は4件の講演が行われます。NVDAの開発と東アジア言語対応の最新情報、NVDA日本語チームの活動紹介、そして河村氏のご講演です。

9月17日(月曜・祝日)は「NVDA開発者と進める意見交換会」として、日本語に対応したスクリーンリーダーの機能について議論しました。

 

言語

海外からお招きするゲストの講演は英語ですが、そのほかは日本語で議論を行ないました。

 

背景と目的

NVDA (Non Visual Desktop Access) はオープンソース(ライセンスはGPL)のスクリーンリーダー(視覚に障害がある人が音声や点字でコンピューターを操作するための支援ツール)で、Python 言語で開発されています。

海外では NVDA の利用者が増えています。2012年5月に行われた海外の調査 (WebAIM) では、NVDA が主要なスクリーンリーダーであるという回答が 13.7%、NVDA をよく使っているという回答が 43.0% と発表されています。
この世界の動向に、日本が取り残されないようにすることは、大事なことです。

日本におけるNVDAのコミュニティは2010年頃から、日本の Python 開発者コミュニティの皆様の協力を得て、NVDAを日本語で使うために必要な機能(音声合成、かな漢字変換、点字出力)の開発を行ってきました。NVDA日本語版は、2012年6月に公開したの最新版(2012.2.1jp)が2ヶ月で約1600回ダウンロードされています。

NVDA の開発母体である非営利組織 NV Access Inc. は、東アジア言語拡張のプロジェクトを2012年5月にスタートしました。これは台湾と香港の団体の資金提供でスタートし、インプットメソッド(IME) 対応の正式な開発が始まりました。このプロジェクトには NVDA 日本語チームのメンバーも協力しています。
中国語、韓国語、日本語などのマルチバイト文字を処理する支援技術は、実装が複雑であるうえに、それぞれの言語に根付いた文化の影響を強く受けています。 例えば、日本のスクリーンリーダー利用者が長年にわたってなじんだ日本語のかな漢字変換の読み上げ方法は、中国語の漢字を選択する台湾のスクリーンリー ダー利用者のインターフェースとは同一ではありません。さらに、日本の点字システムは世界から見ると非常に独特で、世界のほとんどの言語で利用されている 点訳ライブラリが日本語では利用できません。
東アジア言語の支援技術に関わる技術者やユーザーが、このような状況を相互に理解しあう機会は、なるべく多いほうがよいと考えます。

もう一つの重要な課題は、寄付や募金に依存している NVDA プロジェクトを今後どのように支えていくかということです。
NVDA 日本語チームは日本における非営利の開発者グループとして、正式に発足したばかりの団体ですが、この NVDA 東アジア言語拡張プロジェクトに開発メンバーとして関わるだけでなく、資金援助もしたいと考えています。
そのために、日本でも、視覚に障害のあるかたの当事者団体や支援団体の皆様に、NVDA の開発がどのように行われているのか、NVDA がいま世界でどのように普及しつつあるのか、もっと知っていただきたいと考えています。

アクセシブルな電子書籍の標準技術である DAISY の理念は、「視覚に障害がある人が追加のコストを負担せずにコンピューターが使えるようにしたい」という NVDA の理念と重なります。今回、DAISY プロジェクトに長いあいだ関わってこられた河村様のお話から、オープンな支援技術の開発プロジェクトが目指すべきもの、そしてプロジェクト持続の秘訣を学びたいと考えています。

 

プログラム委員(NVDA日本語チーム)

  • 西本 卓也
  • 新城 直
  • 高地 範弘
  • 寺田 学

 

メッセージ募集

日本の NVDA ユーザー、関係者の皆様から NVDA 本家の開発者へのメッセージを募集しました。

  • 内容は、日本語、英語で公開させていただくことをご了承ください。
  • メールアドレスや個人を特定できないように配慮する予定です。NVDA日本語チームで内容を確認して、分類、集計などをさせていただく予定です。
  • メッセージの紹介にあたって誤字を修正したり、一部分だけを引用したりする場合があります。
  • NVDAや日本語版の改良に関するご意見は開発のためにも活用させていただきます。

 

メッセージのご紹介

事前に5件のメッセージをいただきました。時間と進行の都合ですべてをご紹介できなかったことをお詫びします。 9月17日に下記のメッセージをご紹介しました。

私は日本人で、視覚に障害があります。 私はNVDA日本語版を使っております。西本様はじめ、NVDAの開発に携わっておられる皆様には大変感謝しています。

私は、日本語以外の言語のOS上で、スクリーンリーダーを併用しながら日本語とその他の言語を不自由なく入力したり読み上げさせたりできる環境を求めています。 NVDAではそれが実現できるのではないかと期待しています。 先日、本家のNVDAが近々中国語に対応すると聞きました。ゆくゆくは同じ東アジア言語の一つである日本語にも対応してもらいたいです。私はNVDA日本語版がなくなってもいいというのではありません。本家のNVDAの中に正式に組み込まれて逞しく成長していってほしいのです。

私は自宅では英語版のWindowsがインストールされたパソコンを使っています。英語用と日本語用に違うスクリーンリーダーをインストールしてあり、それらを切り替えながら作業をしています。 英語用のスクリーンリーダーでは、日本語の文章を読み上げることはできるのですが、どういう漢字で書かれているのか確かめたり、日本語を入力する際に変換候補を区別したりしたいときに不便でした。一方、日本語用のスクリーンリーダーでは、英語の読み上げがわかりにくく、英語が堪能ではない私にはなかなか内容が理解できませんでした。そんなわけで複数のスクリーンリーダーを使い分けるようになりました。 私は外国からの研修生たちにパソコンの使い方を教えたこともあります。そのときは、日本語版Windowsのパソコンに日本語用のスクリーンリーダーという環境でしたが、日本語のパソコン用語(ほとんどは英語から訳されたもの)を説明するのにだいぶ時間がかかってしまいました。 一つのスクリーンリーダーだけでよくなれば、かなり便利になると思います。

また、NVDAで他のソフトを利用しやすくするためのアドオンソフトが次第に増えてきているのも注目すべき点です。これらも言語の違いを超えて共有できたらすばらしいと思います。

 

謝辞

このワークショップを開催するにあたってご支援とご寄付をしてくださった方々のために NVDA日本語チーム活動報告サイトを開設しています。

このサイトのイラスト:NVDAJPイメージキャラクタ「でめきん」(作者 炉辺愛)表示 - 継承 2.1 日本 (CC BY-SA 2.1)